太極拳

太極拳概要

太極拳とは

中国に伝わる伝統武術の一派。
東洋哲学の重要概念である『太極思想』を取り入れた拳法。
起源は明代末、清代初と言われています。
『老子』『荘子』『孔子』『孫子』などの影響を受け
幾多の優れた武術家によって作りだされた『哲学拳』とも言われ
武術として継承されてきた太極拳は『伝統拳』と呼ばれています。
また、『伝統拳』に対し、競技・表演用に整理された太極拳や
健康体操として簡易化された太極拳などを『制定拳』と呼びます。
太極拳の健康効果は古くから知られていましたが
その習得は容易ではなく、万人向けと言えるものではなかったため
中国政府が第二次世界大戦後
『伝統拳』の健康増進効果はそのままに
誰でも学ぶ事ができる新しい太極拳を作る事を計画したのが
『制定拳』のはじまりです。
現在、広く普及されている簡化太極拳(24式太極拳)は中国政府が制定したものです。

伝統拳 門派

陳式太極拳
河南省陳家溝の陳一族を中心に伝承されてきた武術で
全ての太極拳の源流と言われています。
柔軟で緩やかな動きと
纏絲勁【てんしけい】(螺旋の道理による力の作用方法)によって
全身の勁【無駄な力を抜いた正しい力】を
統一的に運用して繰り出される豪快な震脚や発勁が特徴である。
【震脚(しんきゃく)→瞬発的に踏みつける技の一種。陳式特有。】
【発勁(はっけい)→瞬発的に正しい力を繰り出す】
楊式太極拳
陳氏14世・陳長興の弟子である楊露禅が創始し
19世紀の北京において広く門弟に教授された。
楊健候、楊澄甫三代にわたって改良が加えられ
大きく歩幅の広い大架式のトウロ(型)が普及している。
のびのびとして柔らかく、発勁においては激しい動作を行わない。
制定拳の基となったことでも知られる。
呉式太極拳
楊班侯に師事した呉全佑と、その子・呉鑑泉によって創始された。
前傾姿勢が特徴で、動作は緊密でまとまっている。
系統によって歩距や架式の高さに違いが大きい。
中国国内だけでなく香港を中心として華僑の間にも普及されている。
武式太極拳
楊露禅の友人である武禹襄が露禅に陳家太極拳を学んだ後
陳清萍に弟子入りして本格的に陳家太極拳を修め
それに独自の理論を加えて創始した。
親族にしか伝承されないなど
近年まで保守的な姿勢をとっていたため、伝承者は極めて少ない。
孫式太極拳
孫禄堂によって創始された。
形意拳の歩法、八卦掌の身法、武式太極拳の手法が統合されている。
開合によって動作を連関し
快速な活歩によって転換することから
『開合活歩太極拳』とも称される。
和式太極拳
和兆元が陳清萍に学び創始した。
陳家太極拳と異なり、発勁に激しい動作を伴わない。
陳家太極拳の一派と見なされてきたが
近年、代表的伝統太極拳として認定された。
鄭子(ていし)太極拳
楊澄甫の弟子・鄭曼青が、楊式太極拳を整理し37式にまとめたもの。
鄭曼青は台湾において
五絶老人『ごぜつろうじん』
(詩、画、書、医、武5つでかなう者がいない程すごい人)と言われています。
套路37式、楊式太極剣、推手、内功(気功)からなり
学習内容が少ないことから『簡易太極拳』と言われることもあり
楊式太極拳において入門用の套路として教授されることもある。
鄭曼青がニューヨークに移住し
現地で太極拳を教授していたことから、主に欧米人の間で普及された。
名称が『鄭式太極拳』でなく『鄭子太極拳』となっているのは
鄭が自らの門派を立ち上げていなかったことに由来している。
古伝統合太極拳
中央国術館副館長であった陳泮嶺によって
古伝の楊家太極拳を中心として
その派生である呉家、武家、郝家の太極拳を取り入れ
源流である陳家も研究し
さらに形意拳、八卦掌の技術を取り込んで編出された
99勢からなる統合太極拳。
『双辺太極拳』『99式太極拳』とも呼ばれ
日本では『正宗太極拳』とも呼ばれている。

制定拳

簡化太極拳(24式太極拳)
最初の制定拳として1956年に発表された。
楊式太極拳の主要な24の動作から構成されている。楊式太極拳の入門用の套路として教えられることもある。
88式太極拳
24式太極拳に続き1957年に発表された。
24式太極拳の原理に基づいて楊式太極拳の動作を改めたものである。
48式太極拳
24式太極拳の上級套路として1979年に発表された。
楊式太極拳をベースに、陳式太極拳、呉式太極拳、孫式太極拳の動作を取り入れて作られた。
24式太極拳や伝統太極拳は右足を軸足にする動作が多いため、太極拳普及を鑑みた結果左右軸足の回数が均等になるように整えられている。
総合太極拳(42式太極拳)
1980年代後半になって太極拳の国際大会が催されるようになり、それに伴って競技会用の統一された套路として制定された。
『規定套路』或いは『競技套路』と呼ばれ、競技会種目として採用されている。
48式太極拳と同様、楊式太極拳をベースに陳式太極拳、呉式太極拳、孫式太極拳の動作が組み合わされており48式太極拳よりも各門派の特徴的動作を明確に演ずることが出来る。
太極剣
器械(武器)の入門用として編纂された。
楊式太極剣をもとに編纂された『32式太極剣』と、競技用套路として陳式太極剣、楊式太極剣、呉式太極剣の動作を組み合わせた『42式太極剣』(総合太極剣)がある。
総合太極拳と並んで、競技会で盛んに行われている。

太極拳 哲学

太極(たいきょく)言葉の意味
【易に太極あり、これ両儀を生ず、両儀は四象を生じ、四象は八卦を生ず】(紀元前800年頃 『易経』)
『太極』とは、天地万物が生成する以前の状態から、万物が生成・発展・変化するきっかけを作るもの
『太極』から、両儀=陰陽が生まれる つまり 『太極』とはすべての根源を指す言葉です。
物事が生成、発展、消滅、転化するプロセスに注目した考え方
『陰陽』は、互いに対立し、依存し、入れ換わる
すべては変化し、その変化の中に生きる道を見出す智慧
一見良くないと思われるネガティブな事も実は重要で有用である
『陰と陽』などの対立したもの、矛盾したものを統一し中道に生きることが重要と説く拳と言えます。
【虚は実を離れず、実は虚を離れない】【動中求静 静中求動】
太極図はこの『陰陽』の考え方を表しています。
太極図

太極拳の技法
『老子』などは【水は万物を利して争わず】『水』の性質や『円』『球体』などの意義を説いています。
太極拳の技法はこのような考え方に基づいています。
【以柔克剛 柔をもって剛を制す】【二人打一人 相手の力を借りて、相手を打つ】

太極拳 健康法

誰にでもできる健康法
太極拳はゆっくりとした意識的全身運動で
全身の筋肉を効率よく動かすことができる有酸素運動です。
しなやかでゆったりとした動きのため
体力のない人でも手軽にできます。
また、奥の深い武術の技法と効果をそのままに整備されていますので
体に負担がかかりません。
性別や年齢、体力などに関係なく誰でも個人の条件に合わせて
マイペースに続けることができ、
野外はもちろん室内でも、どこでも場所を選ばずできます。
セルフヘルプ チャレンジ メンタル強化
『ゆっくりと均一の速度で力を使わずに動く』ことは簡単そうで
実は難しく、その難しさと向き合うことで自分自身を知り
より上達することで達成感を味わうことができます。
また、続けていくうちに集中力と持久力が養われ
粘りのある精神を身につけることができます。
太極拳はセルフヘルプ チャレンジ の精神を築き
ストレスに負けない心と体を作ることが可能です。
※太極拳は大変奥の深い武術です。
このページでは太極拳について簡単に説明させて頂いております。
詳しい説明は割愛させて頂いておりますので、予めご了承下さい。
なお、詳しくお知りになりたい方は竹内太極拳推奨本をお読みになられるか教室に参加されてご質問下さい。

 

 

 

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